タイトル語り(他作)

 MADにタイトルを付ける作業が結構好きで、色調補正の次くらいに好きな工程かもしれない。

 

 あらゆる作品に付けられているタイトルは、肝心の内容に比べたら副次的なものかもしれないけれど、タイトルがそのものが格好良かったり、単純に語感が良かったり、作品の内容と深く呼応した言葉だったり、伏線そのものだったりすると、とたんにテンションが上がる。ので、ひとひねり加えられたタイトルを見かけると何だか嬉しくなるし、自分がタイトルを付けることになったら何かやってやりたいなという気持ちは持っています。

 

 今回は創作物の中で好きなタイトルの感想を書きます。

 

◆書籍

・ランゲルハンス島の午後

ランゲルハンス島の午後 (新潮文庫)

ランゲルハンス島の午後 (新潮文庫)

 

 村上春樹氏のエッセイ集。読んだのが10年以上前で内容はほぼ覚えていないけれど、タイトルの鮮やかさがずっと頭に残っている作品。

 タイトルになっている「ランゲルハンス島」は島の名前でもなんでもなく、脾臓に存在する細胞群の名称でインスリンなどの消化酵素分泌機能を持つ。細胞が島のように点在していることから付けられた名前だとかなんとか。

 こういった生物学的な用語を使って、あたかも実在する島のように仕立て上げることにめちゃくちゃロマンを感じます。ランゲルハンス島が実在しない島だからこそ、空想の島としての存在感が大きくなるように思えてたまらない。

 ランゲルハンス島の午後に流れる時間や日差しの強さ、咲いている花、乾いた風が吹く様子などを空想してしまう。たった数文字の組み合わせでそうさせてしまうのだから、タイトルの持つ力はすごい。 

 

 

ニコマス

夏への扉 [新訳版] 

 「夏への扉」はロバート・A・ハインラインSF小説。小説モチーフのMADというだけで個人的にツボなのですが、タイトルに[新訳版] が付いていることでより明確に小説が、文庫本の姿が思い浮かぶようでいっそう好きになりました。

 なにかに共感するとき、対象が限定的であればあるほど「わかった」ときの興奮が増す気がしてなりません。

 「夏への扉」はハヤカワ文庫から出版されており、訳者の違いで旧訳版と新訳版のふたつが存在します。ちょっと前の文章で「わかった」とか言っておいて何ですが、ここまで書く過程で、自分が読んだことがあるのは旧訳版だったことが判明しました。ずいぶん訳し方が違うようなので、新訳版も読んでみようかと思います。

 もうひとつぐっときたのが、動画に添えられているキャプション。これは、旧訳版の小説の締めくくり「そしてもちろん、僕はピートの肩を持つ」という一文からきているのだと思いますが、この一文が旧訳版だというのがまたいいな……と。動画を彩る力強くて心地良いフレーズです。

 

 

・star_haruka_sarf_iorin

 使用楽曲であるCORNELIUSの「star fruits surf rider」が元となっているタイトル。春香と伊織の動画です。これは字面がとにかく好きで、特にいおりん(iorin)をローマ字にしたときの収まりの良さ・アルファベット群のかわいらしさがたまらなく、iori だけではこの良さは出てこないなと思うと繊細で絶妙なバランスにただただうっとりします。

 水瀬伊織の愛称であるいおりんは海外のファンにも伝わっていて、海外の伊織クラスタの間ではiorinと綴るのが浸透していたらいいな、と思います。